兄シンヤです。
先日、彼女と一緒に家の近くの大型チェーンの電気屋さんに行ったときのこと。
僕らは春から一緒に住み始める新生活にむけて、まずは、
「今の家電製品がどんな種類があって、どのくらいの金額かを知ろう!」
ということで、軽い気持ちで冷蔵庫や掃除機などの家電売場を「ウィンドウショッピング」しに行きました。
ちなみに、僕はこの電気屋さんに今まで何度も足を運んでいますが、一度も店員さんから「接客」されたことがありません。
いつも僕が見て回るのは、
・電子辞書コーナー
・オーディオ機器コーナー
・パソコンコーナー
です。
いつも店員さんはほとんどいないし、近くを通っても「いらっしゃいませ~!」と言うくらいです。誰も僕に声をかけてこないので、僕も誰にも気を遣わずゆっくり見れて、とても助かっています。
しかし!!今回は違いました!!
3秒で声かけ?!
僕らが冷蔵庫コーナーへ立ち入り、最初に目に入った冷蔵庫に近づいた瞬間!!どこからともなく、若い男性店員さんが現れ、いきなり声をかけてきました。
「冷蔵庫をお探しですか?」
「え、えぇ、まあ、冷蔵庫を探してるっているより、ただ見てるだけなんですが・・・」
僕らが冷蔵庫コーナーに入ってから声をかけられるまでに、わずか3秒!
まさに電光石火!!です!!
僕らはまだ商品に触ってもいない状態でした。
その後、その店員さんは、僕らにそこにある冷蔵庫たちの「機能」を細かく説明してれました。
「この冷蔵庫より、実はこっちの方がオススメなんですよ!なぜかというと、この冷蔵庫は、コンプレッサーが上の棚に付いてるからです!これが、ふつうの冷蔵庫だと下の方についていて、それがスペース効率を落とす原因になっているんです。さらに、これのコンプレッサーはパワーが○○Wにも関わらず、冷却する力は1.5倍もあるんです!さらに・・・ペラペラ・・・」
店員さんの「商品の機能説明」は止まりません。
僕はちらっと彼女の方を見ました・・・
いかーーん!!表情がドヨンとしている!!
さっきまでウキウキした表情をしていたのに・・・
女性には、こういう「コンプレッサー」や「ワット数」などの専門用語や「数値データ」はまったく響きません。
「機能やパワー」といった要素は、男性にしかウケません。基本的に女性は、「見た目がかわいい」とか、「色がキレイ」とか、そういう部分でパソコンや電化製品を選びます。
冷蔵庫売り場を脱出!!
実は、僕自身もあまり店員さんの話にはついていけていませんでした。
適当にあいずちを打っていたものの、僕は冷蔵庫や掃除機などの家電製品にあまり興味がないので、下地知識がまったくありません。
これがもし、ポータブルスピーカーのワット数を説明されたら、すごくピンと来ます。
「この小型サイズのBluetoothスピーカーで30Wか!それはかなりハイパワーだな!」
とか、
「この重さのPA機材で150Wか!これなら、100人くらい入る場所でのマジックショーでも十分に使えるな!」
とか、なんとなくイメージがつきます。でも、冷蔵庫のワット数を言われても、比較対照がないので、ピンときません。
それにしても、不思議です。僕は、今までこの電気屋さんで一度も接客されたことはありません。
(なぜ接客されたのかな?たまたまヒマな店員さんの前を通ったからか?)
と思いながら、適当なところで会話を打ち切り、店員さんから離れました。
ふぅ~!
なんとか冷蔵庫売場を脱出して、掃除機売場の方へ異動しました。
ここなら、誰もいなさそうだ!!
しかし・・・
掃除機売り場でも!!
掃除機売場に入って、最初の掃除機を触ってみようと、手を伸ばした瞬間!!
「掃除機をお探しですか?」
思わずビクッとしてしまいました!!
さっきとは違う店員さんが、ななめ後ろから僕らの前に出てきたのです!さっきまで誰もいなかったのに、・・・いつのまに!
どうやら、気づかないうちに背後に回り込まれていたようです・・・敵に「背後&頭上」を取られることは、戦場では「死」を意味します。
いくら休日の買い物中とはいえ、男としては「気づかないうちに背後を取られた」のは
「ぬぉぉー!!!やられた!(>_<)」
という気分です。
マシンガントーク炸裂!!
そして、その店員さんは、たまたま僕らが見ていた掃除機の説明をし始めました。
(いやいや、まだそれに興味すらわいてない段階なんだけど・・・)
と思いつつ、一応話を聞くことにしました。
(僕は前の仕事で販売員や店長を長くやっていました。なので今でも、お店でこんな風に話しかけてくる店員さんに、冷たい態度を取ることはできません。)
そして、店員さんは、得意のテッパントークを立て板に水のごとく、僕らにスラスラと話してきました。
しかし・・・その内容がまたもや「機能」や「パワー」なのです!!
「この掃除機は、バッテリーがここに搭載されていまして・・・ペラペラ・・・この掃除機は、○○ワットのパワーで、吸引力が他のモデルとは違って・・・ペラペラ・・・」
僕はおそるおそる、ちらっと彼女の方を見ました・・・
いかーーん!!表情がドヨンとしている!!
さっき、やっと冷蔵庫売場を脱出して、持ち直した表情をしていたのに・・・
女性脳には、こういう「数値データ」はまったく響きません!
「機能やパワー」といった要素は、男性脳の領域です。
そして、こういう家電品の決定権は、たいがい女性が握っています。女性の心に響くセールストークをしなければ、売れる確率は低いでしょう。
この2人の店員さんから学べること
僕は、このふたりの店員さんから、「営業の本質」を学んだ気がします。
「学ぶ」というと、「良い例」を見せるイメージがあります。でも実は「悪い例」を見せることも、学びが多いです。
さらに、「見せてもらう」よりも、「自分で体験する」ことの方が、よりインパクトがあります。
今回、僕らは家電をひとつも買いませんでした。
もちろん、買うつもりは最初からありませんでした。
でも、ひとつだけ気づいたことがありました。
「この売場で買うのはやめた方が良さそうだ」
ということです。売場を後にしたとき、僕らの「感情」がネガティブになったのです。
店員さんは、ふたりとも「熱心に」僕らに話しかけてきました。言葉づかいも礼儀正しく、彼らの持っている「専門知識」を、余すところなく僕らに伝えてくれました。
それ自体はとても良いことです。やる気のない店員さんや、言葉づかいが悪い店員さんより、ずっと良いでしょう。
なのに、2人の店員さんのセールストークを聞いた僕らは、ネガティブな感情になりました。
なぜでしょうか?
感情がネガティブになった理由
2人の店員さんは、僕らにフレンドリーに話しかけてきました。そして、持っている知識をすべて僕らに教えてくれました。
ただ、ひとつだけ「やらなかった」ことがありました。
それは、「僕らに質問する」ことです。
僕らが今、どんな状態なのか?
僕らが何をしにこの売場に足を踏み入れたのか?
僕らの住む部屋のサイズはどのくらいか?
それを聞く質問は、2人の店員さんの口からは一言も出ませんでした。
僕らの要望を聞くことなく、ただ、「持っている知識」を「アウトプット」しただけでした。
マジックも一緒
実はこれ、マジックショーでも同じです。
プロマジシャンの間でよく交わされる会話があります。それは、
「プロになると、自分がやりたいマジックができなくなってくるよね。」
というものです。
お金をもらってマジックを演じる以上、お客さんの喜ぶネタ構成にするのが、プロとしての仕事です。
でもたいてい、「自分がやりたいマジック」と「お客さんが見て喜ぶマジック」は違います。
「自分がやりたいマジック」は、たいてい、
「誰も見たことのない、新しいもの」
「何年も練習してついに習得した、難しい技法を使った複雑な演技」
です。
でも、お客さんが見て喜ぶのは、
「昔からあるロングセラーのマジックネタ」
「仕掛けの力でカンタンにできて、何の技術もいらないシンプルで分かりやすいもの」
です。
つまり、「自分がやりたいもの」と「お客さんが見たいもの」は正反対ですね(笑)
お客さんを喜ばせるのがプロ
プロマジシャンになると、最優先事項が「お客さんに喜んでもらうこと」になります。
すると、必然的にネタの数は減ります。ウケる鉄板ネタというのは、そんなに数は多くないからです。
また、誰にでもわかりやすくてシンプルなものが増えます。
マジシャンとしては、あまり知的な好奇心をそそられないものばかりです。
でも、ひとつだけ、プロマジシャンになって増えるものがあります。
それは、「お客さんの喜びの笑顔」です。これは、毎回のショーで感じるのですが、マジシャンの最大の喜びは、お客さんのリアクションです。
アマチュアの時には、見せる相手が限られているので、マジックを披露する機会もそんなに多くありませんでしたが、プロになってからは、初対面の人たちにマジックを見せる機会が一気に増えました。
だからこそ言えるのですが、やっぱり驚かれて喜ばれるのが何よりも「やりがい」につながります。
しかも、その対象は子供~お年寄りまで、老若男女を問いません。
みんなの笑顔を見た瞬間、自分がやりたいネタなんてどこかへすっ飛んでいきます。
こんなに喜んでもらえるなら、同じネタを何百回でも何千回でも繰り返そう!という気持ちになります。(同じお客さんには、同じネタを2回見せることはしませんが)
これからも、弟のニイムと2人で、「お客さんに喜んでもらえるマジックショー作り」をしていきたいと思っています。
兄シンヤ
P.S.
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